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自己負担額が増えた新型コロナ内服薬 何を使うべきか | 実践!感染症講義 -命を救う5分の知識- | 谷口恭 | 毎日新聞「医療プレミア」

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 前回述べたように、新型コロナウイルスワクチンの重要性が低下した理由は「有効性が低下している」「重篤な副作用が少なくない」ですが、その他に「内服薬が使えるようになった」があります。一般に特効薬のない感染症(麻疹や風疹など)ではワクチンの重要性が増しますが、特効薬のある感染症(水痘・帯状疱疹=ほうしん、インフルエンザ、肺炎球菌など)は、発見が早ければその治療薬が期待できるためワクチンは唯一の武器ではありません。幸いなことに、新型コロナは内服薬が登場し広く使われるようになりました。しかし発売当初に比べると有効性を疑問視する声が増えています。また2024年4月からは個人負担額が大きく上がりました。今回は現時点での抗コロナ薬の特徴をまとめ、どのようなときに使うべきかを私見を交えて述べてみたいと思います。

内服抗コロナ薬3種を比較すると

 内服の抗コロナ薬はラゲブリオ、パキロビッド、ゾコーバの3種(いずれも商品名)があります。正確にはバリシチニブ(商品名オルミエント)という免疫抑制剤も使用できますが、これはレムデシビル(同ベクルリー)という点滴の薬と併用しなければならず入院が前提となります。またデキサメタゾン(同デカドロン)という内服ステロイドも使えますがこれも入院時のみです。よって外来で処方できるのは先に挙げた3種のみとなります。なお、入院して使用する注射薬はレムデシビルの他に、トシリズマブ(同アクテムラ)、カシリビマブ・イムデビマブ(同ロナプリーブ)、ソトロビマブ(同ゼビュディ)、チキサゲビマブ・シルガビマブ(同エバシェルド)があります。

 3種の薬を時間軸で振り返ってみましょう。最初に登場したのはラゲブリオで、新型コロナの治療薬として「特例承認」を受けたのが21年12月24日でした。実際に患者さんに処方できるようになるには当院では22年6月まで待たねばなりませんでした。メーカーによると、ラゲブリオは入院・死亡リスクを50%減らせるとのことでした。

 次に登場したのがパキロビッドで特例承認を受けたのが22年2月10日、実際に(当院で)処方できるようになったのは同年9月でした。メーカーによると入院・死亡リスクを88~89%減らせるとのことで数字の上でラゲブリオをしのぎます。22年当時は、依然として新型コロナは重症化リスクのある人にとっては「死に至る病」でした。よって少しでもそのリスクを下げるために、当院ではパキロビッド登場後はラゲブリオを(持病の薬との相互作用などでパキロビッドが使えない事例を除いて)ほぼ処方しなくなりました。

 最後に登場したのが塩野義製薬のゾコーバで、22年11月22日に緊急承認(特例承認ではない)されました。こ…

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