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「何もかもが過酷」、米レーニア山頂の「氷の迷宮」を探検 写真7点

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レーニア山の東のクレーター内で、まるで異世界のような氷の洞窟をのぞき込むレーニア山国立公園のレンジャー、タビー・カベンディッシュ氏。(PHOTOGRAPH BY FRANCOIS-XAVIER DE RUYDTS)

 米国ワシントン州にあるレーニア山の頂上付近、東側のクレーターの中には、暗く巨大な氷の迷宮が広がっている。ここは、標高4300メートルに位置する世界最大の氷河火山の洞窟だ。高地にあるだけでなく、目に見えない有毒ガスが充満している場所や、かみそりのように鋭い岩などがあり、足を踏み入れるのは難しい。まして調査するには危険すぎる。(参考記事:「世にも奇妙な場所 火山のクレーター氷河にできた氷の洞窟を探検」)

米国ワシントン州にそびえるレーニア山は、標高4392メートルの活火山だ。(PHOTOGRAPH BY MARK STONE, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

 しかし2014年から2017年にかけて、洞窟探検家でナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)でもあるクリスチャン・ステナー氏率いる探検隊は、ナショナル ジオグラフィック協会の資金提供を受けて、この氷の洞窟を3キロ以上にわたって調査し、洞窟内部の最も詳しい地図を製作した。

 過去にも、1970年代と1990年代に製作されているが、これら2つの地図には相違点や空白の部分、不明瞭な点があった。以前の探検では見逃されていたのか、それとも最近になって新たに形成されたのかは不明だが、今回新たに多くの通路が地図に描き加えられた。

 最新の地図を掲載した論文は、2023年12月号の学術誌「Journal of Cave and Karst Studies」に発表された。そこに描かれた洞窟内の通路の総距離は、過去に製作された地図の2倍近くになる。

 氷河火山にできた洞窟は、ほとんどの場合は短期間で消滅してしまうが、驚くべきことに、この洞窟は数十年間消えずに残っている。なぜこれほど長期間にわたって形を留めているのか、そしてこの先、気候変動によってどのような影響を受けるのかを知るには、洞窟の中に足を踏み入れる必要がある。

火山にある氷河の洞窟

 氷河火山の洞窟は、その名の通り火山の頂上にある氷河の中に形成される。非常に珍しく、世界には氷河洞窟を作ることのできる火山系は、おそらく250ほどしかないとされている。そのなかで実際に洞窟が確認されたのは、南極、アイスランド、北米西部にある一握りの火山しかない。(参考記事:「ギャラリー:火口にできた氷河に高温ガスと水蒸気が彫った神秘の氷の洞窟 写真12点」)

ギャラリー:「何もかもが過酷」、米レーニア山頂の「氷の迷宮」を探検 写真7点(写真クリックでギャラリーページへ)

洞窟内で氷の密度を測るナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーであるエドゥアルド・カルタヤ氏と、探検隊の医師ウッディ・ピーブルズ氏。(PHOTOGRAPH BY FRANCOIS-XAVIER DE RUYDTS, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

 こうした洞窟は、そこに到達するだけでも登山や洞窟探検、アイスクライミングの豊富な経験を必要とする。また、標高の高い場所で何日間も過ごせるだけの体力と精神力も備えていなければならない。そのため、氷河火山の洞窟は、地球上の洞窟のなかで最も理解されていない種類の洞窟かもしれないと、今回の論文の著者らは言う。

 レーニア山の氷河洞窟は、1870年に頂上を目指していた登山家に初めて記録されて以来、多くの登山家たちによって探検されてきた。また科学者たちも、地球上だけでなく別の天体における火山活動や氷河の過程について理解するため、調査に訪れた。

 洞窟の奥には極限環境を好むさまざまな微生物がすんでおり、土星の衛星エンケラドスなどの地球外の氷の海に生命体が存在するとすればどんな姿をしているのか、また、人類がその世界を探検するにはどうすればいいかなどについて、手がかりを与えてくれる。NASAも、ここで氷河洞窟の探査ロボットを試験したことがある。

次ページ:「標高約4300メートルの山頂では、何もかもが過酷です」

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