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[立花理佐さん](下)がんの治療中、冷たい水で手を洗えなかった 暗闇の中にぽつんといるみたいで孤独…泣いていた自分に笑顔が戻ったきっかけ | ヨミドクター(読売新聞)

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 タレントで女優の立花理佐さんは2020年5月に直腸がんと診断されて、その年の10月、直腸と子宮、卵巣、リンパ節を切除する手術を受けました。翌年から始まった抗がん剤治療では副作用に悩まされ、主治医の前で思わず、「死にたい」と口に出してしまうほど、つらかったといいます。(聞き手・利根川昌紀、撮影・秋元和夫)

冷たいものに触れない、食べられない

――手術が終わった後、どのような治療をされたのですか。

 20年10月に手術を受けて、年が明けてからすぐに抗がん剤治療が始まりました。病院に行って点滴を受けて、あとは錠剤を2週間くらい飲む。1週間休んで、それを繰り返すという感じでした。

 でも、途中から副作用が強くなり、当初、予定していた回数はできませんでした。「もう後悔したくないから全部やる」って言ったんですけど、(先生からは)「後悔するのは100分の1くらいの確率だから、副作用を考えたら、もうこれでいいよ」と。

 手術を受ける前にも抗がん剤を服用していたのですが、そのときは、副作用は出ませんでした。

――副作用はどのようなものでしたか。

 髪の毛は抜けなかったのですが、手足にしびれが出ました。冷たいものに触れると、しびれというより、もう痛くて……。抗がん剤治療を重ねるごとに症状は強くなり、最後の方は、シーツに体が触れるだけで痛かったです。 

――痛みは全身に出たのですか。

 特に手足と喉です。手を洗うときは、水道の水がもったいないと思いながら、お湯に変わるまで待っていました。

 冷たいものは飲んだり食べたりできませんでした。ただ、こういうときに限って、冷たいものが飲みたくなるんですよね。炭酸の入ったチューハイとかのCMがやたら目につき、氷の入った飲み物がすっごくおいしそうだなと思っていました。でも、実際は痛くて飲めない。舌もしびれているんです。

 食事も、冷たいものは食べられないので、ほとんど鍋でした。初めのころは、豆腐とご飯しか食べていませんでした。手術してからお尻が痛かったので、何分かしか座っていられず、ほぼ立って食べていました。

退院して自宅に戻ると、物の配置が…

――抗がん剤治療をしていると、気持ちが落ち込む人も少なくないと聞きます。

 落ち込みました。1クール目(1回目)は、「つらいな」と思っても、「元気になるんだったら」と頑張れるんです。それが2クール目になると、副作用がひどくなってだんだん「つらい」に変わる。3クール目は恐怖に変わり、「もうやめさせてください」みたいな感じです。治療が終わるたびに、症状を書いて先生のところに持って行くんですね。いろいろ調べてくれるんですけど、もう先生の顔を見るたびにやめたくて泣いて……。「もう1回」って言われたらどうしようって思っていました。

 診察のとき、無意識に「死にたい」と言ってしまったことがありました。先生は、怒らずに「何かありましたか?」といろいろと話を聞いてくれました。治療法についてもものすごく考えてくれて……。先生に恵まれたと思っています。

――ご家族も闘病生活を支えてくれたそうですね。

 冷たいものを触れないので洗濯ができなかったですし、動きもスローだったので、家事は、(夫が)仕事が終わった後に全部やってくれました。(入院していた)1か月で(夫と息子の)2人の生活ができあがっていて、夫が使いやすいよう(物の)ある場所も変わっていました(笑)。

 家族は優しく接してくれました。お尻が痛いと言えば、低反発の敷きものや、高級なトイレットペーパーを買ってきてくれたり、それでダメなら、また別のものを用意してくれたり……。

 ただ、体を思うように動かせず、家事も何でもやってもらっていると、「私なんていらないんじゃないか」と考えてしまい、だんだん、孤立していくような感じになりました。もう真っ暗闇の中にぽつんといるみたいで……。(夫は)働いているのに家事までやってくれていて申し訳なさを感じ、「(私なんか)いていいのかな」と思う気持ちもありました。

 友達も来てくれて遊びに連れ出してくれたのですが、家のことは全部やらせて、楽しい思いをしていることへの罪悪感がすごくありました。

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